[ 新井貴浩氏が語るカープ ] 広島が29年ぶりの開幕6連勝など、春先の低い評価を覆し
18日の時点で12勝6敗1分けの首位と、胸のすくようなダッシュを決めた。目が離せない
今季の戦いを、カープOBのデイリースポーツ評論家・新井貴浩氏が大いに語り尽くす。
セ・リーグ全球団と戦い終えての現状、そしてシーズン本格化を迎えるこれからに焦点を当ててもらった。
カープは、攻守がしっかりとかみ合った、最高のスタートを切りましたね。まず投手陣に目を向けると、
大瀬良、九里、森下の3本柱と言われていた中、その3人も実力を発揮していますが、
そこへ床田が加わった。キャンプ、オープン戦、そしてシーズンを通じても一番、と言えるような
内容で、もう4本柱と言っていいんじゃないかと思える力を見せています。その計算できる先発陣に、
絶対的抑えの栗林がいる。そこでクローズアップされるのが、そこまでのつなぎ役ですが、
中崎の存在が非常に大きいですね。打たれることもありましたが、ここ2年ほど投げられない時期があり、
そこには目に見えない疲労もあるのでしょう。それでも中崎は、仮に投げなくても、
若手が増えてきたブルペンの精神的支柱としての貢献も大きい。佐々岡監督が、
我慢して育てる若手投手が力を発揮できる土壌が今のブルペンにはあります。
それによって塹江、島内、そして黒原ら、真っすぐの強いピッチャーがつなぎの役割を
果たしている形ですよね。攻撃では、上本が素晴らしい。リーグ最少のチームホームラン数で、
リーグ最多の得点が今の強さを物語っていると思いますが、象徴が上本です。
粘れる、つなげる、そして決められる。8番にいながら、1番バッターの働きができる。
これが西川の打点の多さに現れています。今のカープ打線は文字通り「線」で結ばれています。
(鈴木)誠也の代わりは誰にも務まりません。でもみんなで力を合わせ、分担しながら
補っていけています。これが、上本を筆頭に、打席で非常によく粘っているところからも
うかがえます。しかも、カープはこれがピークではありません。例えば、マクブルーム。
これから調子を上げていきそうです。そもそも合流が遅れており、今後、打席を増やし、
日本の投手というものを肌で感じていくことでフィットしていくでしょう。なぜそう言えるかというと、
外国人が成功するポイントとして、日本の野球をリスペクトする、勤勉である、の2点が
条件となりますが、マクブルームはその両方を持ち合わせているからです。
もう1人が小園です。まだまだ発展途上の選手ですが、ここまで状態が上がって来ませんでした。
ただ本人はどこが悪いか、分かっていると思います。であれば、あとは打席で修正を重ねていけばいい。
一番怖いのは「打たないと」、「このままではまずい」、「試合に出られなくなる」など、焦ることです。
しかし幸いにもチーム状態がいいから、しっかり修正に取り組む余裕はあります。
さらに、彼の守備力。それだけで十分、戦力になっていますから試合には出られます。
焦らずに−。この言葉を贈りたいですね。マクブルーム、小園が上昇気流に乗ってくれば今以上の、
厚みのある打線が期待できますね。ここまでの戦いで、ライバル球団に「カープはやるな」、
「強いぞ」、「ピッチャーもいい」という印象を植え付けることはできたと思います。
警戒される立場ではありますが、一番大切なのは「このままのスタイルを継続する」ということです。
それは戦術面でもそうです。さらに、気持ちの面でもこれまでのままの継続を心掛けて欲しいですね。
僕も現役時代はよく評論家各氏の予想を見てましたから、自分ではやらないのですが(笑い)、
開幕前の低い評価がカープナインのモチベーションになっていることは確かです。
しかも3年ぶりに、地元マツダスタジアムの入場制限が撤廃されました。
他球団の選手からよく聞きましたが、チャンスで一気にボルテージが上がる声援は
本当に嫌なものです。逆に言えば、カープにはすごい力をもらえる追い風となっています。
これらが、ナインの心に火をともし続ける燃料となってくれるはずです。(デイリー 2022.04.19)