[ 球団はバティスタと再契約すべし…「正義マン」に臆するな ] 広島は臆することなく
サビエル・バティスタ外野手(27)と再契約すべきだ。記者はそう考えている。
バティスタがドーピング検査に引っかかり、禁止物質に指定されているホルモン調節薬
「クロミフェン」と、その代謝物「ヒドロキシクロミフェン」が検出されたのはご存じの通り。
だが本人は意図的な摂取について否定している。記者は当初、そんなバティの
「私は禁止薬物が成績を上げる助けにはならないと考えているため、今までステロイドや
他の薬品を使用したことはありません」という声明や「何に禁止薬物が含まれていたのか
検証できませんでした」というアナウンスを眉唾で見聞きしていた。
だが、複数の関係者によると、意図的でない可能性が本当に高いのだそうだ。
関係者の話を総合すると、バティは今年2月頃、沖縄の米軍施設内で、いずれも
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の認証を受けていない海外製のサプリメントを
2種類購入して服用したとみられる。うち1種類が当該物質に汚染されていた可能性が
高かったという。球団などは可能であれば“汚染サプリ”を検証するつもりだったが、
(1)消費済み(2)海外製(3)購入場所が特殊の理由で実現できなかった。
関係者の1人は「私は薬物については素人だが」と前置きした上で、こう説明した。
「クロミフェンもその代謝物も隠蔽物質ではないし、そもそも現在の検査技術では、
筋肉増強剤の服用を隠蔽することは、ほぼ不可能だと聞いている」。
同関係者によると、クロミフェンが単体で検出されるケースは、汚染されたサプリによる
“うっかりドーピング”がほとんどだという。昨年度、検査でクロミフェンが単体で検出された
国内の陸上競技選手が処分を受けたが、こちらも海外製サプリが汚染されていたと主張。
意図的な服用を否定している。そしてバティは9月3日、NPBから来年3月2日まで6か月間の
出場停止処分を科された。また、処分についての異議申し立てをしなかった。
まあ、怪しげなサプリをのんだバティに大きな非はある。でも記者は、カープ・アカデミーを経て
広島入りしたドミニカンの後輩たちが怠惰な振る舞いをしようものなら
「日本人はこういうのが一番嫌いなんだ。日本で成功しようと思うのなら真面目に練習しよう」と
優しく諭す彼のような人物が、筋肉増強剤に頼るアスリートとして最低のズルを働くとは
到底思えないのだ。関西人的に言うと「許してやったらどうや」という思いしかない。
だがネット世論は厳しい声が大きい。特に出場停止処分中のバティが、母国・ドミニカ共和国の
ウィンターリーグで(不振を極めてはいるが)普通にプレーしていること、そして今月2日に
公示された保留選手名簿に名前が記載されたことについて、グレタ・トゥンベリさんばりに
「よくもそんなことを!」という“正義の論調”が多数だ。この点に関して、記者は
「球団やバティを責めるのはお門違いではないか」という旨、ツイッターで発信してきた。
確かに処分は甘い。というかシーズンオフも処分期間に組み込んでしまったら、
ペナルティーとして実効性がない。あるツイッターユーザーから「大リーグのように処分を
『期間』ではなく『試合数』にすべきだ」と返信をいただいたが、おっしゃる通りだ。
だが現行制度にのっとってバティに処分を下したのはNPB。球団もバティも、その処分に沿って
粛々と動いているに過ぎない。ところで近年、ネットを中心に「正義マン」という言葉が
流行しているそうだ。正義のために、悪事を働いた(とされる)人物を徹底的に叩く者を(嘲笑して)
そう呼ぶらしい。「正義マン」の正義は往々にしてはき違えており、常磐道のあおり運転殴打事件で、
無関係の女性が「正義マン」のデマにより被害に遭ったことは記憶に新しい。さらにデマを広めた
「正義マン」が別の「正義マン」に叩かれたり…なんてカオスも甚だしかった。一度やらかした人物が
“ネットリンチ”に遭い、再チャレンジできない社会こそ、記者からすれば正義に背いていると思う。
バティと広島を叩く人々は、小さい頃、立ちションもしたことがない「正義の権化」なのかしら。
「おまえはドーピングを肯定するのか」という声も聞こえてきそうだが、そういう方はこの記事の
2〜6段落目あたりをもう一度ご覧ください。ちなみに広島は、バティと再び契約するか否かを
決めかねている様子。鈴木球団本部長は「引き続き契約するかは(来年)3月2日を
めどに判断する」と説明している。重ねて、ネット世論に臆することなく
再契約すれば良いと思っている。(記者コラム・田中昌宏)(報知 2019年12月19日 15時51分)