2019年01月25日(金)説明書

[ 番記者が教える長野久義のトリセツ ] 巨人にFA移籍した丸佳浩外野手(29)の人的補償として、
広島に指名された長野久義外野手(34)が23日にマツダスタジアムで入団会見。初対面の
在広島メディアを前に、持ち前の人たらし力で“つかみ”に成功した。これまでFA補強ゼロのカープと
広島の街にとって、近年では例のない未知の大物選手の迎え入れは手探りの部分もあるはず。
番記者として接してきた夕刊フジ記者が、誠におせっかいながら「変人チョーさん」の取扱説明書を
進呈する。(笹森倫)「僕、FAで来たわけじゃないですよね?」会見終了後のフォトセッションの最中、
長野は困惑気味に苦笑した。会場の熱気、11台ものテレビカメラ、フラッシュの洪水。
プロテクト枠28人に漏れ、丸の代わりに放逐された境遇とは思えない華々しさだった。
気配りの男は初日から全開。東京からやってきた新参者に対し身構える広島メディアをほぐそうと、
自ら道化役を買って出た。新たなユニホームを身にまとうと、さっそく見知らぬカメラマンを捕まえて
自身の写りをチェック。「おお〜」と感嘆し笑いを取った。続いて背番号が見えるよう後ろを向き、
顔だけひねって前に向ける定番ポーズに応じると、「あいたたた…」と背中を抑えて痛がり
再び爆笑を誘った。同行した巨人の職員は2人。東京から会見に駆けつけた顔なじみの記者も、
夕刊フジ含め2人だけだった。会見後は夕刊フジ記者に「来てくれたんだ!」と握手を求め、
「アレ、よかったでしょ?」と感想を求めたのは、会見冒頭のパフォーマンス。
「このたびカープ球団にお世話になることに決まりました長野久義です」と挨拶したが、
「かんだので、もう1回いいですか?」とテレビカメラに向けてリクエスト。初手から笑いを取り、
会場の緊張した空気を払ったのだ。どこまでが計算だったかは不明だが、「人前に出るのは苦手。
すごく緊張した。できればやりたくない」という言葉も本音だろう。気配りの男ゆえに、
自分の言動の影響が全方位的に気になる。自分がどう報道されているか、こまめにチェックもしている。
スポーツ報道でありがちな「本塁打を何本打ちたいか」「あの投手を打つ自信は?」といった
お仕着せの質問は嫌い。望むのは、誰に対しても平等な「人対人」のコミュニケーションだ。
ファンともしっかり対話する代わりに、1人1回と約束したサインの列に並び直すような行為には本気で怒る。
報道陣との接し方も人本位だ。この日は面識がないカープの報道陣を前に、「一斉に名前を覚えるのは
無理なんで、名刺を渡すときに趣味とか特技とか言って」と要望したが、巨人では挨拶した相手を一度で覚え、
後日に自ら名前で呼びかけ感激させてきた。チーム状態が悪いと是々非々の媒体は煙たがられるが、
巨人の高橋前政権では批判的な夕刊フジを追い込もうと「夕刊フジとつるむと、お前も損するぞ」と
離間工作をする取り巻きもいた。実際に離れていく選手、スタッフ、メディア関係者もいたが、
長野はどこ吹く風。変わらず大っぴらにコミュニケーションをとってくるため、迷惑がかからないように
こちらから距離を置いたほどだ。長野が夜の東京で磨いた“呑みニケーション”は、すでに新天地でも
威力を発揮。広島の繁華街は世間が狭く、酒の席での評判は筒抜けだ。カープ側の心証が良いのは、
背広組が夜の蝶から「長野さんに接客したらすごく紳士的でした」といった声を直接耳にしているからでもある。
新しい同僚とも春季キャンプで酌み交わすつもり。「とにかく石原(慶幸捕手)さんが酒が強いので
ビビっています」と情報収集もぬかりない。弱点もある。極端な潔癖症だ。キャンプ地や広島の飲食店には、
割りばしを用意しておくよう勧めたい。どんな高級店でも、他人が使った可能性がありそうな箸は
断固拒否する。初顔合わせの報道陣との和やかなやりとりの中で、唯一強く反応したのが
「広島の練習は厳しいが…」との質問だ。「大丈夫です。練習しないって言われてますけど、
誤解が多いので。キャンプ初日からできるような体はつくってきた」と主張した。今回の移籍を受けた
巨人・阿部が「俺が見てきた中で一番練習をしなかったけど、一番天才型だった」とコメントしたことへの
明確な反論だった。年明け早々の7日に広島行きが発表されると、米ロサンゼルスで自主トレ中の
本人をよそに、こうした報道が一人歩き。遺恨を強調したい週刊誌は「長野久義の巨人愛は『怨霊』となって
原監督に天罰を下す」などとおどろおどろしく報じ、人柄を惜しむ古巣側からは“聖人伝説”が喧伝された。
不在の間に過剰なまでに祭り上げられた新天地に、半月たってようやく本人が登場。
今後はメディアの力も借りて、等身大の魅力が伝わることを期待したい。(zakzak 2019.1.25)

2019年01月25日(金)21時46分42秒